2020年の男女別5歳級年齢別正規雇用・非正規雇用の割合を国勢調査から算出

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2020年(令和2年)の国勢調査では、15歳以上で仕事をしている人の中で、正規雇用(正社員・正職員)の割合は53.4%となっています。

「正規雇用が半数程度!?」と低い数値に驚くかもしれませんが、全労働力に対する正規雇用率という点に注意しなければなりません。
年齢別(5歳級)、男女別にデータを分けると、全く違う結果が見えてきます。

今回は令和2年の国勢調査データから、2020年男女別、5歳年齢別で正規雇用、非正規雇用の割合を算出。
データから見てきた日本の就業状態の問題点について考察します。

2020年正規雇用・非正規雇用の割合

日本では、年齢や性別によって、就業状態が大きく変わります。
まずは、男女別に5歳級年齢別の正規雇用、非正規雇用の割合から解説していきましょう。

なお、正規雇用に役員は含まれておりません。
非正規雇用率は「派遣社員、パート・アルバイトの合計値から算出しました。

2020年正規雇用・非正規雇用の割合【男性(5歳級年齢別)】

2020年、男性全体の正規雇用率、非正規雇用率は以下の通りになります。

5歳級年齢別での就業状態は、以下のようになります。

正規雇用 派遣社員 パート・アルバイト等 役員 その他
15~19歳 37.7% 0.7% 57.2% 0.2% 4.2%
20~24歳 61.6% 2.3% 30.5% 0.5% 5.1%
25~29歳 80.3% 2.9% 9.6% 1.1% 6.1%
30~34歳 81.2% 2.4% 7.0% 2.3% 7.0%
35~39歳 79.6% 2.1% 5.4% 4.1% 8.9%
40~44歳 77.7% 1.9% 4.4% 5.8% 10.2%
45~49歳 76.2% 1.8% 4.1% 7.2% 10.8%
50~54歳 74.1% 1.7% 4.3% 8.3% 11.6%
55~59歳 70.7% 1.6% 5.5% 10.0% 12.2%
60~64歳 51.2% 2.1% 18.7% 11.9% 16.1%
65~69歳 25.8% 2.6% 32.0% 12.8% 26.8%
70~74歳 15.3% 2.2% 30.4% 15.1% 37.1%
75~79歳 9.1% 1.5% 22.0% 17.8% 49.6%

なお、「その他」には「事業主(雇人あり・なし)」「家族従業者」「家庭内職者」「不詳」の合計値となります。

データから特筆すべき点を、以下にまとめました。

  • 25-39歳の正規雇用率は約8割と高水準
  • 24歳以下の正規雇用率が低いのは、学業の傍らパートやアルバイトが多いことが影響
  • 40歳以上になると正規雇用率は減少傾向だが、代わりに役員率や事業主率が上昇。40代になると、出世や事業開始する人が一定数いると考えられる。
  • 60-64歳、65-70歳では定年退職により大きく正規雇用率が減少
  • 60歳以降では年齢が上昇するにつれて顕著に事業主率が上昇
  • 60歳以降からパート・アルバイト率が急上昇

男性、かつ25~59歳までの、いわゆる「新卒から定年退職まで」の年齢を見ると、正規雇用率は7~8割と高水準です。
役員を含めると、85%前後が企業に属していることになります。

また、割合は少ないですが、派遣社員の推移についても注目すべきです。
年齢が若いほど、派遣社員の割合も高くなります。
25-29歳の派遣社員率が2.9%に対し、50-59歳は1.6%です。
自分の希望で派遣社員をしている人もいますが、若い層の中には正規雇用を諦めて、仕方なく派遣社員を選んだ人が多いと推測できます。

正規雇用と非正規雇用の格差が問題視されていますが、男性のみで見ると、まだまだ正規雇用率が高く、非正規雇用は少数派と言えるでしょう。

2020年正規雇用・非正規雇用の割合【女性(5歳級年齢別)】

2020年、女性全体の正規雇用率、非正規雇用率は以下の通りになります。

男性と女性では、正規雇用率、非正規雇用率が大きく違うのが特徴です。
なぜ、大きな違いが出てしまうのかは、5歳級年齢別を見るとわかります。

5歳級年齢別での就業状態は、以下のようになります。

正規雇用 派遣社員 パート・アルバイト等 役員 その他
15~19歳 21.8% 0.8% 74.8% 0.1% 2.5%
20~24歳 59.7% 2.8% 34.1% 0.2% 3.2%
25~29歳 69.5% 4.6% 21.3% 0.5% 4.2%
30~34歳 59.3% 4.5% 29.3% 0.9% 6.0%
35~39歳 50.7% 4.2% 36.3% 1.5% 7.3%
40~44歳 45.5% 4.2% 40.7% 2.0% 7.5%
45~49歳 42.5% 4.3% 43.3% 2.5% 7.5%
50~54歳 40.0% 3.8% 44.9% 3.0% 8.3%
55~59歳 36.9% 2.8% 46.6% 3.7% 10.0%
60~64歳 24.3% 2.0% 54.7% 4.7% 14.3%
65~69歳 12.5% 1.6% 56.2% 6.0% 23.7%
70~74歳 9.6% 1.5% 45.8% 8.0% 35.2%
75~79歳 8.3% 1.1% 29.4% 9.6% 51.6%

データから特筆すべき点を、以下にまとめました。

  • 女性の正規雇用率が最も高いのは20-34歳で6~7割
  • 30代以上から、パート・アルバイト率が上昇し、60-69歳で56.2%とピークを迎える
  • 女性の派遣社員率は男性の約2倍
  • 男性と比較し、家族従業者が顕著に高い。夫の事業の従業者になっていると考えられる
  • 年齢が上がるにつ入れて、事業主率が上昇

正規雇用率について、男女では大きな差があります。
特に、30代以降では女性の正規雇用率が減少し、代わりにパート・アルバイト等が上昇。
妊娠出産を機に、家事育児をするために仕事時間を減らしたい目的で、パートやアルバイトに移行する人が多いのではないかと推測できます。
私の周りでも、子供が小さい内は専業主婦となり、タイミングを見て復職する人が多いですが、正社員は非常に少なく、ほとんどがパートやアルバイトです。

と言っても、心からパートやアルバイトを選んでいるのか、甚だ疑問です。
夫の家事育児協力が難しく、正規雇用で長時間働くのが困難で、仕方なく非正規雇用を選んでいる人も少なくありません。
今後、育休や時短勤務が進めば、年齢が上昇しても正規雇用率の減少は緩やかになると推測できます。

就業状態からわかる男女格差問題

国勢調査のデータを分析すると、仕事に置いての男女格差問題が見えてきます。

1つめは、男女で役員率に大きな差がある点です。

5歳階級別男女別役員の割合

男性 女性
15~19歳 0.2% 0.1%
20~24歳 0.5% 0.2%
25~29歳 1.1% 0.5%
30~34歳 2.3% 0.9%
35~39歳 4.1% 1.5%
40~44歳 5.8% 2.0%
45~49歳 7.2% 2.5%
50~54歳 8.3% 3.0%
55~59歳 10.0% 3.7%
60~64歳 11.9% 4.7%
65~69歳 12.8% 6.0%
70~74歳 15.1% 8.0%
75~79歳 17.8% 9.6%
80~84歳 18.1% 10.6%
85~89歳 18.1% 11.8%
90~94歳 18.0% 11.8%
95歳以上 22.1% 12.8%
合計 7.5% 2.9%

参照:令和2年国勢調査「第3-1表 男女,年齢(5歳階級),配偶関係,労働力状態,従業上の地位別就業者数(15歳以上)-全国,都道府県,21大都市,特別区,人口50万以上の市」より算出

合計値で見ると、女性の役員は男性の約3分の1程度。
男女平等社会と言われていますが、トップを担っているのは、まだまだ男性が主軸となっています。

一方、パート、アルバイトを見ると、女性が非常に大きな比率を占めています。

5歳階級別男女別パート・アルバイト等の割合

男性 女性
15~19歳 57.2% 74.8%
20~24歳 30.5% 34.1%
25~29歳 9.6% 21.3%
30~34歳 7.0% 29.3%
35~39歳 5.4% 36.3%
40~44歳 4.4% 40.7%
45~49歳 4.1% 43.3%
50~54歳 4.3% 44.9%
55~59歳 5.5% 46.6%
60~64歳 18.7% 54.7%
65~69歳 32.0% 56.2%
70~74歳 30.4% 45.8%
75~79歳 22.0% 29.4%
80~84歳 10.5% 14.1%
85~89歳 4.5% 7.1%
90~94歳 3.0% 5.3%
95歳以上 2.4% 4.1%
合計 12.3% 41.1%

参照:令和2年国勢調査「第3-1表 男女,年齢(5歳階級),配偶関係,労働力状態,従業上の地位別就業者数(15歳以上)-全国,都道府県,21大都市,特別区,人口50万以上の市」より算出

40代に至っては、男性と女性では、非正規雇用率に約10倍の開きがあります。
生活バランスを考えて、自主的にパートやアルバイトを選んでいる女性もいるでしょう。
それを差し引いても、日本のパート、アルバイトは女性に支えられているのが現状です。

そして、大問題なのは、パート、アルバイトの時給が低いこと。
仕事として不可欠なはずなのに、正規雇用と比較し、非正規雇用の収入は総じて低く、退職金などの手当てもない職場が殆どです。
結局、日本経済は女性が低い時給の非正規雇用で働いているから、保たれていると言っても過言ではありません。

日本では、まだまだ男女の間に大きな差があるのが現状です。
シングルマザーの貧困化も、就業状態の男女差が原因の1つでしょう。
また、妊娠出産する女性が、正規雇用で働き続ける困難さも、日本の問題と言えます。

「女性が活躍する社会」を謳うなら、国はもっと総合的に働く環境を整備すべきです。
職場にかじりつき、子供が熱を出しても早退できないようでは、女性の社会進出は進みませんし、少子化は進む一方でしょう。
女性はもちろん、男性も「育児、家事がしやすく、家庭やプライベートを充実できる労働環境」が必要なのです。

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