内閣府が平成30年に行った「少子化社会対策に関する意識調査」の結果がとても興味深いです。
晩婚化、非婚化が進み、出生率が落ちる一方の日本ですが、実は多くの人が「結婚したい」と思っています。
それなのに、なぜ結婚できない人が増え続けるのか…。
その理由はとても複雑に絡み合っていました。
今回は、内閣府のアンケート調査を元に、結婚したいけどできない理由を分析。
結婚できない人につきつけられた厳しい現実を考察します。
目次
「いずれ結婚するつもり」と考える男女は非常に多い
個人主義が進み、独身貴族が人生を謳歌し、生き方の多様化が進む令和時代。
それでも「いずれ結婚するつもり」と考える男女はとても多いです。
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(独身者調査)」では、「いずれ結婚したい」と答えた男女の割合は、以下のような結果が出ています。
- 1987年:男性91.8%、女性92.9%
- 2002年:男性87.0%、女性88.3%
- 2015年:男性85.7%、女性89.3%
結婚したい男女は微減していますが、今でも85%以上の人が「いずれ結婚したい」と答えているのです。
しかし、未婚率は増加の一途をたどり、2015年の年齢階級別未婚率は、以下のように厳しい結果になっています。
- 男性(25-29歳):72.7%
- 男性(30-34歳):47.1%
- 男性(35-39歳):35.0%
- 女性(25-29歳):61.3%
- 女性(30-34歳):34.6%
- 女性(35-39歳):23.9%
もちろん、40代以降に結婚する人もいます。
しかし、40代以降の結婚は男性でも軽く10%を切り、女性に至っては5%未満で少数派です。
統計から見ても「いずれ結婚するつもりだったのに未だに結婚できない」という人は増加傾向にあると言えるでしょう。
いずれ結婚するつもりだけど独身でいる理由とは?
国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査(独身者調査)」では、「いずれ結婚したい」と答えた男女に「独身である理由」を聞いています。
結果は以下の通りです。
- 適当な相手にめぐり合わない:男性45.3%、女性51.2%
- 自由さや気楽さを失いたくない:男性28.5%、女性31.2%
- まだ必要性を感じない:男性29.5%、女性23.9%
- 趣味や娯楽を楽しみたい:男性28.5%、女性20.4%
- 仕事(学業)に打ち込みたい:男性17.9%、女性19.1%
- 結婚資金が足りない:男性29.1%、女性17.8%
- 異性とうまくつきあえない:男性14.3%、女性15.8%
この調査は25~34歳の未婚者が対象なので、「まだ必要性を感じない」は、若い年齢層だと推測できます。
「自由や気楽さ」「趣味や仕事にうちこみたい」という理由も、「まだ充分若い」と考える人の意見が多いのでしょう。
この層は、恋愛にある程度自信があり、「その気になれば結婚できる」という自信があるタイプと考えられます。
一方、「結婚資金が足りない」「異性とうまくつきあえない」など、経済力やコミュニケーション力の問題を理由とする層もいます。
「その気になれば結婚できる」層とは違い、「結婚したいけどできない」という自覚がある、意地悪な言い方をするなら「負け組」な人達です。
そして、注目すべきは、「適当な相手にめぐり合わない」が約半数を占めている点です。
今の時代、少しの労力と資金があれば、いくらでも男女が出会う場に参加できます。
それなのに、適当な相手にめぐり合わないのはなぜなのでしょう。
いずれ結婚したいならば、能力を磨いて現状を打破するしかありません。
簡単ではありませんが、希望を叶えるには何事も努力が必要です。
それは、「経済力」「コミュ力」が足りずに結婚できないと答えた層にも言えます。
彼らはなぜ、「いずれ結婚したい」と思いながらも、現状に甘んじているのでしょうか。
結婚したい独身者のリアルな現状
内閣府が行った「少子化社会対策に関する意識調査」では、結婚を希望しているけど結婚経験のない20~49歳の男女2010人を対象に、結婚に関する意識についてのアンケートをとっています。1つずつ見ていきましょう。
まずは、「いずれ結婚したい」と思っている独身者が考える「結婚に必要な状況」についてです。
- 経済的に余裕ができること:42.4%
- 異性と知り合う機会があること:36.1%
- 精神的に余裕ができること:30.6%
- 結婚の必要性を感じること:28.4%
- 相手が結婚に同意すること:23.0%
上記は、20%以上の人が考える「結婚に必要な状況」です。
この結果から、結婚したいけど結婚に至らない人は、以下のように大きく2つのタイプに分けられることがわかります。
- 結婚できるならいつでもしたいけど、肝心の相手が見つからない
- 経済状況や多忙など環境要因で結婚できる状況下にない
私は既婚者ですが、結婚にはやはりある程度の整った環境が必要だと感じています。
ただ入籍して一緒に暮らすだけでも、相手と幸せになるためには最低限のお金と時間が不可欠。
結婚は生活なので、経済的時間的精神的余裕がなければ、結婚しても相手を幸せにできないし、場合によっては結婚がきっかけで2人の関係が崩れるリスクがあると考えるのは、とても堅実で誠意がある考え方です。
環境を変えることは可能ですが、かなりの努力と時間がかかります。
また、環境の変化が必ずしも正解とは限りません。
複雑な理由が絡み合い、なかなか結婚に踏み切れないのは、本人だけの問題ではありません。
日本の晩婚化、非婚化は、経済状況に大きく影響を受けています。
少子化対策が謳われていますが、それ以前の問題である非婚化について、国はもっと真剣且つ具体的に対策を打つべきです。
個人では解決できない大きな問題が非婚化につながっているのですから。
尚、独身者が「結婚相手に求める理想の年収」は、以下のようになっています。
- 収入は問わない:25.6%
- 200-300万円:17.3%
- 300-400万円:15.6%
- 400-500万円:8.3%
女性(30-39際)
- 400-500万円:21.8%
- 500-600万円:19.7%
- 300-400万円:14.4%
- 収入は問わない:3.5%
この結果から、日本の専業主婦思想は男女ともに廃れつつあることがわかります。
女性だけではなく、男性も共働きを前提に、結婚相手の女性にある程度の年収を求める時代です。
しかし、現実は非常に厳しい状態です。
賃金構造基本統計調査を元に、30台前半の平均収入を見てみましょう。
- 男性正社員:約350万円
- 女性正社員:約310万円
- 男性非正規社員:約270万円
- 女性非正規社員:約230万円
女性が結婚対象として見るボリュームゾーンの30代前半では、女性が理想とする年収に到達していない人が多い現実があります。
男性が共働きで期待する女性の年収も、心もとない状態です。
経済的理由で結婚に踏み切れない人が多いのも納得ですよね。
日本の非婚化を改善するには、若者の経済状況の改善が不可欠なのです。
一方、「相手が見つからないから独身のまま」というのは、本人の努力で結婚の可能性を高められる事案です。
「相手もいないし状況的にも無理」という絶望的な人は別として、「後は運命の相手と出会うだけ」ならば、能動的になれば解決は可能でしょう。
結婚したい独身者の行動と思考
どうにもならない理由で結婚に前向きになれない人がいる一方、条件的には結婚に適しているけれども「適当な相手にめぐり合えない」という理由で、結婚できないと考える人もいます。
彼らがなぜ結婚に至らないのか理由を掘り下げると、更なる闇が見えてきます。
適当な相手にめぐり合わない理由
「適当な相手にめぐり合わない独身者」が考える「適当な相手にめぐり合わない理由の具体的内容」を見てみましょう。
- そもそも身近に自分と同世代の未婚者がすくない(いない)ため、出会いの機会がほとんどない:42.6%
- そもそも人を好きになったり結婚相手として意識することが(ほとんど)ない:18.0%
- 同世代の未婚者は周囲にいるが、自分が求める条件に見合う相手がいない:13.6%
- 好きな人はいるが、相手が自分を好きになってくれず、交際に発展しない:11.9%
驚くべきことに、5割以上が「日常に出会いがないから出会えない」と考えているのです。
更に闇が深いのは、約2割が「好きになったり意識することがない」と答えている点です。
「結婚はしたい」のに、スタートラインにすら立てない状況です。
確かに、私もなかなか好きな人ができない体質なので、気持ちはわからなくもありません。
(以下の記事では、好きな人ができない原因について解説しています)
好きな人ができない原因と対処法!焦る必要なし
しかし、今の時代は工夫次第でいくらでも出会いを増やせるようになりました。
例えば恋愛アプリや婚活アプリを利用すれば、何百万人の登録者とつながれます。
普通に生活していれば、絶対で会えない相手と出会える機会が用意されているのです。
結婚したいなら、当然そのような行動をしているのでしょう。
好きな人ができないのも、好みの相手に出会えないだけ。
出会いを諦めなければ、いつか運命の人と出会えると、結婚したいならポジティブに考えますよね?
結婚相手を探すための行動の有無
「適当な相手にめぐり合わない」という層が、具体的な相手を探すためにどんな行動をしているのかも、アンケート結果に出ています(男性30-39歳の結果)。
- 特に何も行動をおこしていない:64.7%
- 友人・知人に紹介を依頼した:16.3%
- 出会いを仲介するインターネット上のサービスに登録している:9.0%
- 民間企業・自治体が主催するイベント(婚活パーティー、街コン等)に参加している:8.5%
- 民間企業・自治体の結婚相談所・結婚支援センター等に登録・利用している:5.8%
なんと…結婚したいと思いながらも、6割以上の男性が特に何もしていないのです。
尚、女性の方が男性よりもやや能動的ですが、それでも30代で「特に何も行動を起こしていない」という人が45.7%もいます。
これはどういうことでしょうか。
もしや、彼らはドラマチックな運命的な出会いを求めているのでしょうか。
結婚相手との理想の出会い方
では、「どのようにして出会いたいのか」について見てみましょう。
30代の男性は、結婚相手との理想の出会い方について以下のように答えています。
- 出会い方には特にこだわらない:38.8%
- 職場や仕事で:33.9%
- 友人・兄弟姉妹を通じて:20.8%
- 合コンなどの飲み会・イベントで:18.8%
- サークル・クラブ・習い事で:15.6%
- 出会いを仲介するインターネット上のサービスで:9.1%
- 自治体などが主催する婚活イベントで:6.3%
尚、女性も似たような数値で結果が出ており、「出会い方には特にこだわらない」は、年齢が上に行くほど男女ともに増えています。
この結果から、「結婚仲介系サービスの利用は最終手段」と考える人が多いことがわかります。
お見合い文化が廃れ、自由恋愛の流行の果てに晩婚化、非婚化が進んでいますが、まだまだ「恋愛結婚したい」「自然な流れで出会いたい」という思いが根強く残っているのでしょう。
しかし、「出会い方には特にこだわらない」という層の数値と比較しても、実際に婚活サービス系を利用している人はまだまだ少ないです(30代男性で約15%)。
ここでつながるのが、「独身である理由」の「結婚資金が足りない」「異性と上手くつきあえない」層です。
具体的行動を起こせる状況にない、もしくは自分のコミュ力に自信がなく、能動的に動けない人がいるのです。
そこに「結婚したいけど、具体的行動を起こすほどではない」という、非常に受動的な層が加わります。
結婚したいのにできない本当の理由は闇が深い
結婚したいのにできない本当の理由は、本人の能力や状況が複雑に絡み合っています。
特に難しいのは、自力で結婚に辿り着けない層です。
彼らは、以下のような理由により、結婚したいのにできない状況に陥っています。
- 経済的な困窮
- 多忙過ぎる現状
- 致命的に恋愛がわからない
- 根底に潜む他力本願な思考
彼らに「がんばれ」と言っても意味がありません。
頑張っても抜け出せない、あるいはどう頑張れば結果に結びつくのかがわからないのですから。
結婚したからといって幸せが約束されるわけではありませんが、結婚したいのに希望が叶わないのは、やはり辛いことですよね。
昭和のように自力では難しい2人を結びつける社会的構造があれば良いのですが、それを求めない層も多いため、なかなか難しいでしょう。
やはり、強いサポートが必要なのです。
今考えられる強いサポートは、1人ずつ担当者がつくサービスや支援の手厚い結婚相談所が挙げられますが、かなりの資金が必要です。
経済的困窮者には難しい選択肢となります。
となると、国主導で行うしかありません。
しかし、国が若者の結婚支援に本気を出すのを待っていたら、婚期を逃してしまいます。
自力で結婚につなげる状況や能力がない上に、手厚いサポートを受ける資金もない、さらに公共サービスはあてにならない。
このように、結婚したいのにできない人の中には、八方ふさがりの層がいます。
しかも、結構な数です。
これこそが、結婚したいけどできない理由に潜む日本の闇。
結婚したいけどできない人は「自助でがんばれ」と突き放され、誰にも助けてもらえません。
これが今の日本です。
さあ、あなたはどうしますか?
死に物狂いでがんばりますか?
それとも結婚を諦めますか?
結婚を強制されない自由がありますが、自分の人生を選択する責任を背負うのはあなたです。
記事参照:令和元年版 少子化社会対策白書
データ引用元:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2019/r01webhonpen/index.html